日戻り鰹、その日釣り、最も新鮮な鰹です

一人から三人乗りの３トンから１０トン位の小型船

で曳縄釣り(トローリング)で鰹を釣り獲った日に水

揚げされた鰹を日戻り鰹と言います

漁場は、港から５時間以内、房州からだと伊豆諸島

三宅島と八丈島の中間「黒瀬」辺りが限界です

船は想定される漁場までの所要時間を逆算して日の

出までに漁場到着出来る時間に出港します

小さな船には鰹群を探索出来るソナーはありません

水温を検索し、鰹群の好む水温域に入る事が暗い海

で出来る鰹群探索の一歩です

適水温域に入ると両舷に８m位の竿を鳥が羽根を拡

げた様に取り付けます

先端、中間には曳縄を曳く綱が付いています、両舷

側にも準備します、とも(船尾)のマストに抱かせた

長い竿の先端にも曳縄を曳く綱が取り付けられてい

ます、都合７本の道具を操って鰹を釣ります

うす明るくなると水平線をにらみ海鳥の群を探しま

す

鳥が海中に突っ込むのを見付けたら最高、そこには

小魚が居て鰹さんが朝食中、道具を全て投げ入れて

速力を落とし、鰹群を中にして旋回します

小魚は逃げまどいますが擬似餌は一定の運動で鰹の

鼻先をなでます、１匹喰いつけばどんどん来ます

喰い付いたら揚げ易い道具から順次取り込みます

針を外し、尻尾を深く持って頭の急所を強く叩きま

す

血抜き槽に投げ入れ、死ぬのを待ってから氷を効か

せた魚槽に移します

良い群に当たれば一人乗りでも２００から３００尾

５００kgもの鰹を釣る腕利きの漁師もいます

今度は入港時間の問題です

操業位置から港までの所要時間を見当つけて予定時

間一杯操業するか、お日様が高くなって喰い付きの

悪くなった操業を続けるより早く入港して、明日の

出港に備えるか考えどころ

こうして釣った鰹がお昼過ぎに入港して水揚げされ

ます、これが日戻り鰹と言われます

消費地市場には翌日上場されます

水揚げされた時点ではその日釣り鰹ですが、消費地

市場に上場された時点ではその日釣りではなくなっ

ています

日戻り鰹をその日に食べられるのは水揚げ地に住む

人の特権です

釣りたてのかつおの味は格別、柔らかいのに噛みき

れず、３０回も噛むとほんわか旨味が感じられます

当店は水揚げ漁港から７０km離れていますが、日

戻り鰹漁獲の情報には敏感に反応し、仕入れ時間を

遅らせてもその日釣り鰹を店頭に置くよう心がけて

います

日戻り鰹とは、零細漁師の漁師魂とあくなき努力に

より漁獲された鰹を言います

江戸時代江戸で１匹１両と言われた鰹は、６丁櫓８

丁櫓の一本釣り船で伊豆半島東沿岸、房州外房で漁

獲された鰹を、例えば外房白子浦から８丁櫓の押送

船(おしょくりふね)(運搬船)で送ったものです

白子浦をお昼過ぎに船出して房総半島の西端洲崎を

日の有る内に通過すれば翌夜明けには、豊洲市場

ならぬ日本橋魚河岸に着いたと言われています

屈強な漁師、かこ(水夫)の命と取りかえっこの賜物

が１両に値したのでしょう

そのような無理の中に海難も多く、私は先祖からの

言い伝えにより戒名も読みとれない７、８人の慰霊

碑の守りをしています

これから初かつおの季節、美味しい魚を沢山食べて

コロナウイルスに負けない基礎体力をお作りくださ

い

本日、直売所千倉は１２時開店です