自然環境破壊が水産業に与える壊滅的影響その2
昭和52年、伊豆海域大室出し漁場は
たも掬い網漁による大漁にわいていました
たもすくい網漁とは、周りの海域より
比較的浅い瀬(100~50m位)に集まる
鯖を電気の光りと撒き餌により海面に誘き
寄せ直径1m位のたも網ですくい獲る漁法
です、餌は紙袋入りの冷凍いわし、
1隻当り15kg入を500個位使います
出漁船は100隻以上、50000個の
餌が消費され、50000枚の紙袋が
投棄されました
この紙袋が海底に堆積して腐敗した場合
海底の自然環境を破壊する
鯖の来遊にも大きな影響を与えるから
「海上投棄を禁止する」、「港に持ち帰れ」
との指令を出したのは、当時の
平舘漁業協同組合長鈴木惣之助でした
漁協内部にも異論がありましたが、押きり
実行しました
業界最大漁協の強行には、他の漁協は追随
するしかなく、1週間位で足並みが揃った
と記憶しています
40年以上の昔、
千葉県行政に自然環境保護などという概念
は無く、東京湾内の千葉県沿岸部では
とてつもない環境破壊が進行していた時期
を訴え即実行する指導者が存在したのです
鈴木惣之助氏は大正元年生まれ、
県議会議長
千葉県漁連会長
日ソ漁業交渉政府委員等を歴任
戦後生まれの私より明らかに一世代以上
うえの海軍帰りの保守ごちごちの人をして
自然環境保護を訴えさせたのです
特筆すべきは、
紙袋を海上投棄したからとして、必ずや
海底の自然環境を破壊するという確証は
ないままに自然環境破壊の懸念があれば
これは阻止するという、自然環境保護の上
で最も大切な、
疑わしきは予め予防する基本精神を実践
されたことです
伊豆海域のたもすくい網漁は、
昭和52年、54年と経験した事のない
大漁に恵まれましたが、57年の漁獲量
皆無というこれ又経験した事のない大不漁
に遭遇し、崩壊してしまいました
東京、静岡、神奈川、千葉、1都3県の
100隻以上の鯖たもすくい網漁船は
兼業の秋刀魚漁、鰹一本釣り漁からも姿を
消したのです
伊豆海域のみならず北部太平洋海区の真鯖は
は昭和50年代中期を境に資源量そのもの
がほとんど存在しないという極端な歴史
を経験し現在30年を経て資源量は回復
基調にあります
昭和57年の大不漁の後
千葉県水産試験場は、すでに52年に
産卵量が極端に少なくなっていたと公表
しました
資源量の極端な減少は、大型旋網漁船の
大量漁獲のみならず、海況の変化による
産卵量の激減が大きな原因の一と考え
られるに至りました
この海況変化、自然環境の悪化に人為的
行為が影響しなかったと誰が断定出来る
のか、誰にも断定出来ません
故に、僅かの可能性であっても自然環境に
悪影響が及ぶ可能性は、初めから排除して
おかねばなりません
鈴木惣之助氏より3世代近く若い、本来
はずの千葉県幹部職員が
僅かの自然環境破壊だからとして容認する
姿勢は看過出来ません
自然環境破壊は小さな物、少しの物が
蓄積した時に起こる現象が怖いのです
小さい事として容認する事は
先人の小さな努力の積み重ねを否定する
以外のなにものでもありません
厳しい自戒を求めます